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2010年6月17日 (木)

性同一性障害 心の性 診断は焦らず 思い込みの人も 不要な手術避ける

体は男、心は女(またはその逆)--。自分の性に強い違和感を覚え、苦しむ性同一性障害の患者たち。タレントのはるな愛さんらが注目され、性別適合(性転換)手術を望む人も増えたが、この中には障害ではない人もいる。十分なカウンセリングが必要だ。(佐藤光展)

 横浜市の日野病院(精神科)には、全国でも珍しい性同一性障害の専門外来がある。担当する副院長の松永千秋さん(52)は、自らこの障害に悩んできた。

 男性として生まれたが、幼い時から女の子の服を好み、姉の服を内緒で着て外出した。「なぜ男の子の服を着ないといけないの?」。素朴な疑問は、成長と共に激しい苦痛に変わった。

 大学では物理を学び、女性の心を振り切るかのように、ボート部で体を鍛えた。だが、誰にも言えぬまま悩みは深まった。自分を知るため医学部に入り直し、精神科医になった。

 通常、体と心の性は一致するが、先天的な要因でずれることがある。この不一致に苦しむのが、性同一性障害だ。社会生活に支障をきたすほど、著しい違和感や苦痛が続く場合、この障害と診断される。苦痛のせいで、うつ病などの精神疾患を合併しやすい。

 逆に、女装や男装好きでも、自分の性に違和感がなければこの障害ではない。

 松永さんが外来を開設したのは2008年春。1人30分のカウンセリングを行う。患者に自分史を詳しく書いて来てもらい、いつから自分の性に違和感を覚えたのか、きっかけはあったのか、周囲はどう見ているのか、などを丹念に聞く。

 こうしたやりとりを続けるうち、実は障害ではないのに自分でそう思い込んでいることに気づく人もいるため、診断を確定するまでに平均1年かける。これまでの受診者約100人中、障害と確定したのは30人で、思い込みの人は8人いた。

 昨年受診した20歳代の女性は、同性愛者。性別適合手術を希望していたが、カウンセリングの結果、この障害ではないことが分かった。自分の性に違和感を覚えたのは、付き合う女性に「性格が男性的」と言われたのがきっかけで、子どものころから違和感を抱き続けたわけではなかった。

 松永さんは「本当に苦しむ人にとって手術は有効だが、過剰な手術につながらないよう、カウンセリングを重視するべき」と話す。

 松永さんは22歳で結婚。妻は障害を理解し、成長するのを待って伝えた娘2人も、受け入れてくれた。

 女性ホルモンを使い、外見がふっくらと女性的になったことで、好奇の目を注がれなくなった。昨年、病院の朝礼で障害を明かした。以前から髪を伸ばし、女性的な服を着ていたため、「すんなりと受け入れられました」と笑う。今は性別適合手術は考えていない。

 周囲とは違う自分の性のあり方を自然に受け止めることができれば、生きづらさは和らぐ。そのためにも、多様な人の存在を認める社会でありたい。

 松永さんは言う。

 「女性として社会に受け入れられて、私は今、とても幸せです」

 〈性同一性障害〉

 国内の患者数は5000人前後とされる。ホルモン剤投与や性別適合手術は、事前に精神科などで十分なカウンセリングを受けることが大前提だ。なお、これらの治療には健康保険が使えない。

読売新聞

FTM-GIDエピテーゼ専門店 匠

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