性同一性障害の男児 揺れる親友への告白
性同一性障害の男児 揺れる親友への告白
中学校に女子生徒として入学することが決まった兵庫県播磨地方の小学6年の男児(11)は、6歳で性同一性障害(GID)と診断され、ずっと女児として生活してきた。周囲の友人らに体の性を打ち明ける「カミングアウト」はしていない。体の違和感に苦しみ、同級生に悪口を言われる日もあったが、おおむね順調な小学校6年間だったという。だがこの夏、思春期の第2次性徴を迎えて体が急変、男児は親友の女児に告白すべきか心が揺れている。
小学校入学時から、男児に「オカマ」「男(おとこ)女(おんな)」と言われることはあった。4年生になる前には、風呂で母親に「体が嫌。死にたいねん」と打ち明けている。5年生の自然学校と6年生の修学旅行では、教員と一緒に眠った。
今年7月。小学校のプールで、女児用の水着で座っていたとき、そのしぐさがおかしいと同級生の女児に笑われた。男児は帰宅後、母親に泣きついた。自分自身が変化に苦しむ体について、「同性」の女児に笑われたショックは大きかった。
この夏、男児の体は急速に変化した。胸板が厚くなり、骨格ががっちりし始めた。病院で「第2次性徴」が始まっていると診断された。現在は健康診断や月経の授業も女児と一緒に受けているが、このままでは中学入学後、取り巻く環境が厳しくなる可能性が高い。
男児は「女の子より声が低いし、体がちょっとずつ男の子になっていっていると思う」と話す。
「6年になる前の春休みに、仲の良い女の子に(体の性を)話そうとしたけど、2人だけで遊ぶときがなくて言えなかった。中学に入るときには言うかもしれない。でもみんなに話すのは、いろんなことを言われるだろうから嫌」。小声で沈黙を挟みながら、ゆっくりと語った。(霍見真一郎)
■水着、身体検査 尽きぬ悩み
性同一性障害(GID)の子どもたちにとって、中学時代は男女別の制服着用や男性的、女性的な体つきに変化する「第2次性徴」で、苦痛を受ける時期とされる。文部科学省は今年4月、全国の都道府県教委などに、GIDの児童・生徒の心情に十分配慮した対応をするよう通知している。
GIDと診断され、兵庫県内の公立高校に女子生徒として通う男子(15)は中学時代、男子生徒として入学し数日で不登校になった。傷つく言葉でいじめられたことが原因だったという。
大阪私立学校人権教育研究会の川西寿美子さんは、GIDの中学生について「いじめの対象になったり、誰にも悩みを打ち明けられなかったりし、自尊感情が低くなる」と話す。
川西さんらは、GIDの中高生らの交流会を大阪で定期的に開いているが、制服▽トイレ▽水着▽身体検査‐など共通の悩みは多い。
男性として暮らす大阪の女性(22)は中学時代、学校では女子制服に耐え、帰宅後はさらしで胸を押さえて、私服のズボンにはき替えた。学校のトイレでは、周りの女子に「ここにいてごめん」と心の中で謝っていたという。
GIDの対応では、鹿児島県で中学校の女子生徒に男子制服着用を認めるなど、現場で配慮が広がり始めている。文科省は通知の中で「個別の事案に応じたきめ細やかな対応が必要。不安や悩みをしっかりと受け止め、児童・生徒の立場から教育相談をすることが求められる」と強調する。
(中島摩子)
神戸新聞
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