芸工大飯塚さん最年少入選 自主製作映画・ぴあフィルムフェス 性同一性障害をテーマに
作品に込めた思いを語る飯塚さん(山形市上桜田の東北芸術工科大で) 自主製作映画の登竜門とされる「ぴあフィルムフェスティバル」で、東北芸術工科大映像学科3年の飯塚花笑(かしょう)さん(21)が脚本・監督などを手がけた映画作品「僕らの未来」が、コンペ部門「PFFアワード」に最年少で入選した。さらに、カナダで開かれる「バンクーバー国際映画祭」のアジア部門「ドラゴン&タイガー」の招待作品としてもノミネート。飯塚さんは「初の長編が認められ、信じられない」と喜んでいる。
「ぴあフィルムフェスティバル」は今年で33回目。本県ロケ作品「小川の辺」の篠原哲雄監督や、現在上映中の「神様のカルテ」の深川栄洋監督らも過去に入選している。
今回、「PFFアワード」には計602本の応募があり、飯塚さんの作品を含む17本が入選。グランプリなど受賞作品は、最終日の30日に決まる。
「僕らの未来」は、女性の体に産まれたが、心は男性という高校生が、性同一性障害を受け入れていく75分間の作品。主人公は思春期の真っただ中で、制服のスカートをはくことなどに悩みながらも、歩みを進めていく。飯塚さんは、自身が性同一性障害の当事者。「自分の中で一番大きな問題だったので題材にした」と打ち明ける。
ただ、本作のテーマは、性同一性障害にとどまらない。飯塚さんは「他者と違う、“普通じゃない自分”は誰にでもあり、悩むはず。でも、その先に必ず出口はあるから大丈夫と言いたかった」と説明する。
作品は昨年8月、大学の機材を借りて9日間で集中的に撮影した。撮影スタッフは映像学科の1、2年生。出演者は、同大生のほか、学内の未就学児教育機関「こども芸術大学」に子どもを通わせる保護者にも声をかけて確保した。撮影場所には山形北高を借りた。
映像学科の1、2年次で学ぶのは基礎だけのため、撮影の実践的技法は知らなかった。これまで作った作品は長くても5分間。このため本を読んで独学した。出演者も全員が素人で、試行錯誤の連続だった。
撮影に行き詰まると、映画監督の根岸吉太郎・同学科長に相談。根岸学科長の「力むことないよ」との言葉に救われた。
「ぴあ」の審査員には、「技術的にはまだまだ」と指摘されたが、「身を切って、全力で映画に自分自身を託した所が良かった」と評価されたという。
作品は、東京国立近代美術館フィルムセンターで開催中の「ぴあフィルムフェスティバル」で23、29日に上映されるほか、山形市の山形国際ドキュメンタリー映画祭でも10月10日に上映予定。
同大は「入選は快挙。作品をぜひ鑑賞してほしい」としている。
2011年9月23日 読売新聞